論風一陣 東旅協刊「タクシー六十年史」に思う!(Taxi Japan 462号より)

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必要に迫られて資料整理に取り掛かって間もなく、東京乗用旅客自動車協会(現=東京ハイヤー・タクシー協会)が編纂した冊子「タクシー六十年史」(発行人・川鍋秋蔵)を手に取り、ページを繰ってみて資料整理の手が止まった。

表題のサブに「江戸時代以来の庶民の乗物及び江戸時代の交通規制」が付され、興味が尽きない内容で、発行人は当時の川鍋秋蔵会長で、編集人は広報委員長だった川村和太郎氏だった。

タクシーが誕生して今年で112年目、実に52年が経過していてお二人ともに鬼籍の人なのは致し方ない。

内容は、パネル展示用の写真やイラストを多用してタクシー誕生から発行当時までの60年を振り返るとともに、「庶民の乗物考」との観点から「江戸時代の駕籠が人力車に、人力車が自動車のように、なんらなすすべもなく追い落とされ、とってかわられていった」とあとがきで川村広報委員長が記すなど、タクシー誕生60年の立ち位置を江戸時代にさかのぼって検証している点に含蓄を感じさせる。新機軸や技術の進歩で現存するものが姿を消して新しいモノにとって代わるのが世の常とはいえ、タクシー誕生112年目の立ち位置として、世の常のように新しいモノにタクシーがとって代わられ消滅してしまうのは勘弁願いたい。

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「タクシー六十年史」では、「タクシーの誕生」、「円タクのはじまり」、「自由営業が生んだ”雲助タクシー“」、「新免競合時代の到来 神風タクシーの発生」、「世界のタクシー タクシーさまざま」など、計30枚の展示会用パネルを掲載している。その最後の「タクシーの未来」のパネルには、「世界の各都市は、運転者の志望者が次第に少なくなりつつあるのが悩み」と前置きして、「そこでアメリカの業界には、相乗りタクシーの考え方を発展させたデマンドバスへ脱皮を、西ドイツでは、コンピューターの運転でガイドウェイの上を目的地へ直行する二人乗りの新交通システムに、キャビネン・タクシーと名付けた」などの紹介記事を掲載し、「タクシーのような小回りのきく交通機関が、将来とも公共交通システムとして必要だ、という認識が、各国で高まっている」と結論付けている。

あと8年で「タクシー百二十年史」を迎える。このところのライドシェア旋風の猛威にさらされているタクシー業界、当面のサバイバル対応に注力するのはもちろん、自動運転車両の技術革新の進捗状況によって、人が人を運ぶタクシー事業の存続すら危ぶまれかねない先行きに、「タクシーのような小回りのきく交通機関が、将来とも公共交通システムとして必要だ」との認識を果たして共有できるのか。時は人を待たずである。タクシー事業のアイデンティティに思いを致し、公共交通システムとしてのタクシーの存在意義を改めて再確認しなければならない。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 463号 をお楽しみに!

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