全国ハイヤー・タクシー連合会(川鍋一朗会長)は11月13日、滋賀県大津市内の「大津プリンスホテル」にて第61回全国ハイヤー・タクシー事業者大会を開催する。
新型コロナウイルス禍による乗務員減少を主な要因としたタクシーの稼働率低下に対し、「国民の移動の自由を守る」などと揚げ足を取られる形でライドシェア解禁論議の渦中にさらされ続けてきたのがタクシー業界である。岸田総理の退陣により、政権がライドシェア解禁推進派から穏健派に交代した後、今月27日に投開票が行われた総選挙において自民党と公明党による連立政権が過半数割れを起こして政局の流動化が予想される中、ライドシェア解禁の動きも停滞するという見方が強まり、タクシー業界内にはホッと胸をなでおろしている向きもあるのではないか。しかし、楽観論は許されない。いずれ再燃するであろうライドシェア全面解禁派の反動に対し、これを阻止するための理論武装と業界の意思統一を図り、一致結束して行動する準備を怠ってはならない。とはいえ、理論武装と業界の意思統一を図る真のリーダーが不在であることは懸念材料だ。
全タク連の川鍋一朗会長に対して本欄は再三再四、その言動について、東京大手・日本交通グループや代表取締役を務める配車アプリ大手GOにおける「我が社」の経営戦略最優先の我田引水ぶりを報じてきた。直近では、東京都特別区・武三交通圏など全国の主要交通圏を含む144事業区域における準特定地域の指定が「今年9月末で100%解除される」との見解を6月の時点で表明し、タクシー業界に衝撃を与えた。ところが国土交通省は指定基準を満たさなくなった11地域を除く135地域の指定継続を公表した結果、川鍋会長の見解表明が”フェイク“であったことが白日の下に曝されることになった。とはいえ、来る事業者大会の席上で川鍋会長が”フェイク“な見解を散したことへの弁明、釈明をしないであろうと筆者は考える。これまでも事実に反する発言や不適切な物言いが存在しても、その反省や釈明を一度も聞いたためしが無いからである。
それにしても、このタクシー日本丸の帆先を定め、制御する、信頼のおける船長が不在なのは、タクシー業界にとって不幸でしかない。タクシー経営者としての見識、実績はもちろんだが、タクシー業界全体の利益を図るスタンスと発想、および行動力を兼ね備えたニューリーダーの出現を筆者は切に願うものである。また、タクシー事業者による自家用車活用事業を、ライドシェア全面解禁派に忖度して「日本型ライドシェア」とした呼称も情けない限りである。
100年以上にわたり国民のラストワンマイルの移動を担ってきたのはタクシーである。国益にかなったその使命を継続し、確保していくため、タクシー業界自らが確固とした意志、方針を表明して最善を尽くすことを求めたい。タクシー事業存続の重大な岐路に立つ今こそ、後顧の憂いを残してはならない。
(高橋 正信)
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