論風一陣 日本交通大量増車のための暫定制度か!(Taxi Japan 475号より)

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関東運輸局は、2月19日に開催した定例記者会見の中で、準特定地域におけるタクシー未稼働枠活用制度に関して、東京都特別区・武三交通圏において期間限定の暫定タクシー増車枠743台を超える台数が申請されていることを明らかにした。

暫定増車枠に対して、日本交通および直営子会社で300台、業務提携のフランチャイジーで約100台の計400台ほどが日本交通グループから申請されているようだ。

関運局の矢吹尚子・自動車交通部長は、暫定増車枠への増車申請に関して「すぐに稼働ができる事業者という制約がある制度」としながら、「皆さん(タクシー事業者)がどう動かれるか、やってみないと分からなかった。暫定でトライアルした意味はあったかなと思う」とする見方を示した。

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本紙では昨年来、交通資料社(二村好彦社長、東京都荒川区)による東京都特別区・武三地区の各社別月間タクシー輸送実績を複数回にわたり報じている。各社別輸送実績で明らかなのは、日本交通および直営子会社27社が保有台数平均の営収ランクで上位50社中過半数を超えて占めているほか、フランチャイジーを含めると30社を超えるなど、日本交通G一強の実態だということだ。直近の1月実績でも、上位50社中32社が日本交通Gである。このことから、暫定増車枠の過半を超える申請が日本交通グループから出ることは、「やってみないと分からない」ではなく、やる前から容易に想像できたはずだ。

準特定地域におけるタクシー未稼働枠活用制度における全国の暫定増車枠は、62地域1467台で、その半数上の743台を東京都特別区・武三交通圏で占め、さらにその半数以上が日本交通Gの申請となっている。この実態を前に、未稼働分の一部を稼働させるための期間限定による暫定とはいえ、増車を認める手段は、改正タクシー特措法で「供給過剰となる恐れがある地域」として準特定地域を指定している判断に矛盾していて、はなはだ疑問だ。

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さらに関東運輸局管内では、他の暫定増車対象の5地域は暫定増車枠が2台〜4台とわずかな台数で、増車申請出なかった。もっともらしい数式で増車枠を考えたとしても、仮に茨城県の水戸県央交通圏の増車枠2台、神奈川県小田原交通圏の増車枠4台で増車されてとして、当該交通圏のタクシー供給にどんな変化、効果を生むというのであろうか。

多くの問題点、矛盾をはらんだ、準特定地域を対象としたタクシー未稼働枠活用制度は、稼働実績好調な日本交通Gの大量増車を図るために考案された制度といえば言い過ぎか。「暫定でトライアルした意味はあった」と矢吹・自動車交通部長が発言している限り、1年という期間限定の増車期間における効果を検証し、所期の目的が達成されたのかどうかを公表しなければならない。そして、この暫定増車に対し、間違っても暫定解除や継続するような次第は許されないことを明記しておきたい。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 476号 をお楽しみに!

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