論風一陣 50年余保有の運転免許証返上の顛末!(Taxi Japan 478号より)

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昨年12月に東京都公安委員会から、「免許証更新のための講習のお知らせ・重要」と記したハガキが筆者の自宅に届いた。自動車運転免許証の更新期限は今年6月2日なのだが、半年以上も前に講習会への受講案内のハガキが到着。筆者は現在71歳。70歳以上の免許証更新手続きには、これまでになかった高齢者講習会を、都内の教習所で受講しなければならないという制度改正に伴うものであった。

筆者は、16歳の時に原付免許証を、その3年後に普通自動車一種免許証を取得し、半世紀を超えて自動車を運転し続けてきた。幸いにも大きな事故や重大な違反もなく幸運だった。そこで、この1枚のハガキを折に触れて見つめ、暫し、あれこれ沈思黙考してきた。

当初は、何も考えずに制度改正に従って都内の教習所で高齢者講習を受講して運転免許証を更新しようと思っていたが、ある教習所に受講を申し出たところ、満員で空きがないとのことだった。その時は、また、改めて他の教習所に連絡しようと放置していた。そしてハガキが到着して3~4カ月が経過。高齢者によるブレーキとアクセルの踏み間違いによる交通事故のニュースが後を絶たず、認知症の疑いによる通常では考えられないような高齢者の暴走事件も相次ぐ中で、ハタと自らを振り返った。

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筆者は、今から16年前にクモ膜下出血による開頭手術を受けたほか、その5年後に心臓の冠動脈にステント挿入のカテーテル手術も行っている。いずれも血管系の疾患によるもので、その他にも永年にわたり股関節周辺の疼痛に悩まされている。客観的に、自らの健康状況をチェックすると、ブレーキとアクセルを踏み間違うリスクをウンヌンする前に、運転中に血管関連の突発的な疾患が発生した場合、状況や場所によって重大な人身事故を惹起しかねないことに気付いたのである。

まさかブレーキとアクセルの踏み間違いなどしない、と筆者も思っているが、これまで交通事故を起こしたほとんどの高齢加害者も同様に思っていたはず。都内池袋において母親と幼子を死亡させた高齢ドライバーなどは、裁判中もブレーキとアクセルの踏み間違いを認めず、あくまでも装置の欠陥を主張し続けたのは印象に強く残っており、無責任にも他人事と捨て置く訳にいかないと思った。

高齢者だからと言って、必ずしも運転免許証を返上しなければならないことはない。健康状態は、それぞれ個人差があることなので、あくまでも筆者が、筆者の健康状態と今後の体力の衰えを加味して考えた結果、今が潮時という結論に至ったものだ。そう決断した時、少なくともハンドルを握って人を傷つけたり、殺めたりする不測の事態を事前に回避できたことに、安堵している次第である。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 479号 をお楽しみに!

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