論風一陣 ライドシェア解禁旋風再来を警戒せよ!(Taxi Japan 487号より)

2606

石破茂首相は9月7日、自民党総裁の辞意を表明した。後継総裁を決める臨時総裁選挙にも出馬しない意向を示し、首相交代が確実となった。

これを受けて、一般マスコミは、後継候補へのスポットライトを当てることに余念がない。そればかりか、石破政権の交代による積極的な経済対策実行への期待感から日経平均株価が急騰し、最高値を更新、現状打破の社会・経済変革への期待感を急拡大させている。

TOPページはこちら

この変革の予感を、タクシー業界は、どう受け止めるべきか。石破政権の誕生前夜を振り返れば明らかである。河野太郎・前規制改革担当大臣を筆頭としたライドシェア全面解禁旋風が猛烈な勢いとスピードで吹き荒れたのは記憶に新しいところである。菅義偉・元首相がライドシェア解禁論議の口火を切り、自民党総裁選に立候補した小泉進次郎・衆院議員が公約に掲げるなど、河野氏を加えた神奈川県選出の衆院議員であるライドシェア解禁3人組の勢力と影響力の前に、タクシー業界はライドシェア解禁前夜の恐怖を感じたことを、よもや、のど元過ぎて暑さを忘れた、ということはないであろう。

真っ先に立候補を表明した茂木敏充・前幹事長は、タクシー業界との共存を模索する姿勢を示しつつも、基本的にはライドシェア解禁派とみられる。ライドシェア解禁組の菅、小泉、河野の3氏は言うまでもないが、自民党内でライドシェア解禁に全面的に反対している現職議員は、ほとんど皆無。前回の総裁選でタクシー業界が推した高市早苗・前経済安保担当大臣についても、デジタル化やイノベーションを重視する中でシェアリングエコノミーの促進を主張しており、ライドシェアそのものに後ろ向きとは必ずしも言えない。そもそも自民党は、連立相手の公明党が反対する中で、日本維新の会が国会に提出したライドシェア新法案(ライドシェア事業に係る制度の導入に関する法律案)の衆議院における閉会中審査に賛成し、継続審議に道を拓いた。

TOPページはこちら

こうみてくると、今回の自民党総裁選挙における有力候補と目されている小泉進次郎・衆院議員(農林水産大臣)が次の首相となり、少数与党の現状を解消するために日本維新の会との連立拡大に踏み切ることになれば、タクシー業界としては最悪のシナリオとなりかねない。それが回避できたとして、誰が次の自民党総裁、そして首相になっても、停滞する社会・経済の変革への期待が膨らむ中で、次期政権においてライドシェア解禁論議が再び浮上する可能性は低くはないだろう。

地方創生を主要施策として掲げた石破政権が、この点では例外的だったと言えるかも知れない。タクシー業界として最悪のシナリオにも対処できる善後策を用意しなければならない、といえよう。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 488号 をお楽しみに!

Taxi Japan公式サイトバナー

Taxi Japan最新号は公式サイトでご覧いただけます。

日本タクシー新聞社の発行する、タクシー専門情報誌「タクシージャパン」は毎月10・25日発行。業界の人が本当に求めている価値ある情報をお届けするおもしろくてちょっとユニークな専門紙です。

前の記事論風一陣 アプリ問題へ拱手傍観の全タク連に喝!(Taxi Japan 486号より)
次の記事論風一陣 コロナ後特需が終了、景気後退の足音!(Taxi Japan 488号より)