日本でも今年に入ってからMaaS (様々な移動手段や移動に付随するサービスを組み合わせてスマホアプリなどを通じてワンストップで提供する取り組み)の社会実装に向けた様々な実証実験がスタートしている。
大阪と京都、奈良、伊勢志摩、名古屋を結ぶ関西の大手私鉄である、近鉄グループホールディングスは10月1日〜11月30日の秋の観光シーズンに合わせて、観光型MaaSの「志摩MaaS」の第1回実証実験を行う。
「志摩MaaS」の第1回実証実験では、未来シェアが提供するオンデマンド型相乗り配車・配船システム(SAVS)を活用して、オンデマンドバス、オンデマンド相乗りタクシー、オンデマンド海上タクシー(英虞湾マリンキャブ)を組み合わせた運行を行い、ヴァル研究所が運用するインターネット上の複合経路検索サービス「mixway」のホームページで検索や予約などが出来るようにする。
さらに、来年1月9日からスタートする予定の第2回実証実験では、ワンストップでオンデマンド交通の検索・予約・決済が可能となる「志摩MaaS」専用アプリを開発するほか、鉄道と組み合わせたデジタルフリーパスや観光地到着後の旅行商品などの提供も行う。
そこで本紙の熊澤義一編集長は10月18日〜20日にかけて三重県有数の観光地である伊勢志摩地方を訪問し、観光型MaaSの実証実験「志摩MaaS」を体験した。
いつまで経ってもデマンド相乗りタクシーが配車されて来ないというトラブルにも遭遇したが、特に観光型MaaSで想定される周遊型観光は、利用者側が旅程を策定するため、予定していた公共交通が機能しないと旅行そのものが台無しになり、やはりマイカーで、ということにもなりかねない 。
いくら最先端のMaaSシステムを採用しても、運行側で基本的な現場オペレーションが出来ていなければ台無しになるということを、再確認することになった。
<Taxi Japan編集長=熊澤 義一>
関西私鉄大手の近鉄
近鉄として知られる近畿日本鉄道は関西の大手私鉄で、大阪市中央区にある大阪難波を起点に、京都、奈良、伊勢・鳥羽・志摩、名古屋を結び、総延長が500キロを超えるという、J Rを除くと日本最長距離の路線長を持つ。
近鉄は、京都や奈良などの日本を代表する観光地を沿線に持つほか、伊勢神宮や風光明媚なリアス式海岸が特徴の伊勢・鳥羽・志摩という三重県を代表する観光地と大阪や名古屋を結んでいる。
本紙の熊澤義一編集長は大学卒業まで愛知県に住んでいたこともあり、正月に伊勢神宮に参拝したことが何回もあるなど、風光明媚な観光地である伊勢志摩地方は馴染み深かったが、一方で、志摩は、伊勢や鳥羽のさらに先というイメージがある。近鉄グループが今回の実証実験で、志摩地方に特化した観光型MaaSにより、伊勢神宮のある伊勢市や鳥羽水族館のある鳥羽市からさらに先への旅客の誘導により志摩市の観光開発に取り組む意図はよく分かる。志摩市には、近鉄グループが運営するテーマパークの志摩スペイン村がある。
伊勢志摩国立公園は、リアス式海岸で有名な英虞湾がある風光明媚な観光地であり、2016年には伊勢志摩サミットの会場 にもなった。また、世界的に有名な真珠や牡蠣の養殖、伊勢海老、アワビなどの豊富な海産物、さらには全国の約半数の海女によるアワビなどの漁で有名だ。
観光型MaaS
観光型MaaSは旅に出発する前の周知がカギだ。旅行者は、事前に旅の旅程を計画するため、計画段階で観光型MaaSの存在が旅行者に知られていなければ、利用される確率は格段に低くなる。様々な鉄道会社やバス会社が、それぞれ独自の観光型MaaSを開発して提供したとしても、観光地ごとのMaaSアプリを利用者がスマホにインストールして利用するかどうか、それ以前に利用者に認知されるかどうか、という問題に直面することは容易に想像できる。
MaaSの開発と活用推進では、協調領域と競争領域の仕組み作りが重要だ。検索、決済、時刻表、運行情報などのデータ連携のための標準API(コンピュータ同士がデータをやり取りするための仕組み)の確立などのMaaS構築のための基盤となる協調領域は公的な形で統一し、その上の競争領域では、鉄道会社やバス会社、タクシー会社などの個別の公共交通事業者、旅行会社、さらにはプラットフォーマーなどが、それぞれ独自のMaaSや様々な付加的サービスなどを提供する、という形が必要だろう。
例えば、今回の観光型の志摩MaaSであれば、MaaSアプリから志摩観光を検索すると、複数の観光MaaSパッケージが提示され、そこから自身の旅行プランに合うMaaSプランを選んで決済すると、往復の近鉄特急乗車券、観光地での移動に利用する鉄道、デマンドバス、デマンドタクシー、デマンド海上タクシーなどの乗車・乗船予約、観光施設などの入場などが行えれば、自家用車による観光からの転換も期待できるだろう。
協調領域と競争領域
そうした観点では、日本版MaaSにおける協調領域の構築に関して、国土交通省が今年9月に、MaaSの基盤となるデータの方向性を検討するための「MaaS関連データ検討会」を開催。
MaaS関連データ検討会について、国土交通省では「新たなモビリティサービスであるMaaSの基盤となるデータについて、連携する範囲や形式等に関する方向性をまとめることを目的として有識者で構成する検討会を設置する」としながら、「MaaSに関連するデータについて、国土交通省で検討するのは本検討会が初めて」と説明。
さらに、「MaaSは、地域や観光地の移動手段の確保・充実や公共交通機関の維持・活性化等に資する新たなサービスとして、全国各地で取組みが始まっている」と指摘。今年3月の「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会」の中間とりまとめを踏まえ、「MaaSの全国的な普及を前に連携するデータの範囲やそのルール、データの形式等について整理し、一定の方向性を提示する」との考えを示し、「そのことは、利用者および事業者の双方にとって有益であるとの認識」だとした。
国交省の先行モデル事業
また、日本版MaaS の実現に向けたモデル事業の実証実験では、国土交通省は先行モデル事業に対する第1弾の助成金交付を決定。
国土交通省は、MaaS 等の新たなモビリティサービスの推進を支援する「新モビリティサービス推進事業」に関して、事業の熟度が高く、全国の牽引役となる先駆的な取り組みを行う「先行モデル事業」として、令和元年度は19事業を選定。
これらの事業主体から提出された申請を踏まえ、準備が整った15事業を対象に助成金の交付を決定。これにより、先行モデル事業としてのMaaS がいよいよ各地で開始される。残る4事業についても、準備が整い次第、交付が決定される予定だ。
近鉄グループホールディングスが10月1日〜11月30日の秋の観光シーズンに合わせて実施する観光型MaaSの実証実験「志摩MaaS」も、先行モデル事業として交付の決定を受けた。
国土交通省が助成金の交付を決定した第1弾の先行モデル事業は、大都市近郊型・地方都市型が、▽日立地域MaaS 実証実験(茨城県日立市)▽顔認証やアプリを活用するキャンパスMaaS 及び医療MaaS 実証実験(茨城県つくば市)▽社会実装に向けた前橋版MaaS の実証(群馬県前橋市)▽神奈川県における郊外・観光一体型MaaS 実証実験(神奈川県川崎市および箱根町)▽令和元年度静岡型MaaS 基幹事業実験(静岡県静岡市)▽まちなか自動移動サービス事業実証実験(兵庫県神戸市)
地方郊外・過疎地型が、こもののおでかけをMaaS で便利にするプロジェクト(三重県菰野町)▽相楽東部地域公共交通再編事業(京都府南山城村)▽定額タクシーを中心とした過疎地型Rural MaaS 実証実験(島根県大田市)▽庄原地区 先進過疎地対応型MaaS 検討・実証プロジェクト(広島県庄原市)
観光地型が、▽会津Samurai MaaS プロジェクト(福島県会津若松市)▽志摩地域観光型MaaS 実証実験(三重県志摩地域)▽大津市中心市街地及び比叡山周辺の活性化を目指した大津市版MaaS 実証実験(滋賀県大津市)▽瀬戸内の復権へ:海・陸・空の自由な移動網による国際観光先進都市の創造(瀬戸内エリア)▽八重山MaaS 化事業(Phase1:観光型MaaS 構築に向けた実証実験)(沖縄県八重山地域)
三重県有数の観光地「志摩」
本紙の熊澤義一編集長は10月18日〜20日にかけて三重県有数の観光地である伊勢志摩地方を訪問し、国土交通省が日本版MaaSの先行モデル事業に選定した観光型MaaSの「志摩MaaS」を体験した。
近鉄グループによる「志摩MaaS」の第1回実証実験では、未来シェアが提供するオンデマンド型相乗り配車・配船システム(SAVS)を活用して、オンデマンドバス、オンデマンド相乗りタクシー、オンデマンド海上タクシー(英虞湾マリンキャブ)を組み合わせた運行を行い、ヴァル研究所が運用するインターネット上の複合経路検索サービス「mixway」のホームページで検索や予約などが出来るようにする。
さらに、来年1月9日からスタートする予定の第2回実証実験では、ワンストップでオンデマンド交通の検索・予約・決済が可能となる「志摩MaaS」専用アプリを開発するほか、鉄道と組み合わせたデジタルフリーパスや観光地到着後の旅行商品などの提供も行う。
近鉄グループ各社が参画
関西の大手私鉄である近鉄グループホールディングスが実施主体となって行う観光型MaaSの実証実験「志摩MaaS」には、インターネット上の複合経路検索サービス「mixway」を運用するヴァル研究所、オンデマンド型相乗り配車システム(SAVS)を開発・運用する未来シェア、近鉄グループの路線バス会社である三重交通、三交タクシー、三重近鉄タクシー、和栄タクシー、志摩マリンレジャー、近鉄・都ホテルズ、近鉄レジャーサービス、賢島宝生苑など、近鉄グループ企業を中心に志摩地区で交通・観光関連事業を展開する地元事業者が参画。摩MaaS協議会と旅行会社の近畿日本ツーリスト中部が協力する。
志摩MaaSの実証実験では、公共交通を活用した周遊観光の利便性を向上させるため、三重交通が、近鉄・鵜方駅前とリアス式海岸の英虞湾を臨む眺望に優れた横山展望台や桐垣展望台などを結ぶオンデマンドバス(運賃は大人一人200円)、三交タクシーが波切魚市場と桐垣展望台を結ぶ8人乗りジャンボタクシーによるオンデマンド乗合タクシー(運賃200円)、三重近鉄タクシーと和栄タクシーが志摩地域の観光地間を結ぶデマンド型相乗りタクシー(指定乗降ポイント間を事前確定運賃で運行。相乗り成立時には運賃を40%割引)、志摩マリンレジャーが賢島港や志摩観光ホテル、志摩ベイサイドテラス、賢島宝生苑、間崎島、御座、真珠の里など11の乗降地間を海上航路で結ぶ事前予約型の海上タクシー・英虞湾マリンキャブ(運賃は大人一人1500円)、さらには近鉄賢島駅と鵜方駅から近鉄グループホテルへの無料送迎バスを新たに運行する。
ヴァル研究所の検索サービス
本紙の熊澤編集長は、ヴァル研究所が運用するインターネット上の複合経路検索サービス「mixway」のホームページで、出発地を名古屋、目的地を志摩地方の鵜方に設定して、経路検索を行った。
実証実験「志摩MaaS」の第1弾は、スマホアプリではなく、ヴァル研究所が運用するインターネット上の複合経路検索サービス「mixway」のホームページを使ったブラウザ版ということもあるが、検索方法が選択式になっていないため志摩地域に関する予備知識が無いと、経路検索そのものが難しいのではないか、との懸念を持った。観光型MaaSとして、経路検索の利用方法がある程度想定されているのであれば、「選択式+任意検索」が使い易いのではないか、とも感じた。
インターネットのブラウザ版でも近鉄特急の切符がルート検索結果一覧から購入できるようになっているが、乗車券を購入するためには近鉄の会員になる必要があり、訪日外国人を含めて旅行者には不便であり不要な手間だと感じた。
既存の発券システムを利用する上での都合だろうが、海外のMaaSアプリではクレジットカードなどの決済手段の登録は必要だが、サービスの利用ごとに会員登録を求めてくるケースはあまりなく、一時的な利用である観光型MaaSであることからも会員登録の必要性があるとは思えない。また、ワンストップで様々な交通手段や付随するサービスが利便性高く利用できることがMaaS構築のメリットであることからも、来年1月からの第2回実証実験でのアプリ化時における改善を期待したい。
利用促進には事前周知がカギ
本紙編集長は、「志摩MaaS」においてヴァル研究所が運用するインターネット上の複合経路検索サービス「mixway」での検索結果からリンクした近鉄のインターネット発券サービスを使って、近鉄の新型観光特急しまかぜの指定席を予約して決済した。
近鉄の鵜方駅に到着すると、切符売場の横に「志摩MaaS」のポスターが掲出されていたが、どれだけの観光客がこのポスターに気付いただろうかと、少し心配になったが、そもそも観光型MaaSは旅に出発する前の周知がカギだ。旅行者は、事前に旅の旅程を計画するため、計画段階で観光型MaaSの存在が旅行者に知られていなければ、利用される確率は格段に低くなる。
MaaSモデルコースの提案
本紙編集長は、鵜方駅に到着すると、ヴァル研究所が運用するインターネット上の複合経路検索サービス「mixway」のホームページで、出発地を鵜方駅、目的地を横山展望台に設定して、経路検索を行った。横山展望台を目的に設定したのは、「志摩MaaS」の実証実験を紹介するページ上に、リアス式海岸の眺望が素晴らしいという横山展望台にオンデマンドバスを利用して訪れるプランが紹介されていたからだ。
観光型MaaSでは、周遊型観光の提案がカギになるとみられており、どれだけ魅力的なモデルプランと、利便性の高い移動手段を提案できるか、が重要だ。
三重交通のオンデマンドバス
複合経路検索サービス「mixway」のホームページで鵜方駅から横山展望台への経路検索をすると、三重交通が運行するオンデマンドバスの利用が表示された。
オンデマンドバスの配車運用は、未来シェアのオンデマンド型相乗り(乗合)配車システム(SAVS)によって行われていたが、利用のためにはオンデマンドバスの利用登録が必要だった。近鉄利用時に続く利用登録であり、ワンストップで検索・予約・配車・発券・決済までが利便性高く行えることがMaaSのメリットと考えると、「志摩MaaS」で利用モードごとに利用登録が必要になったことは非常に面倒に感じた。来年1月からの実証実験の第2弾で導入される専用スマホアプリ化では利用時の一括登録に対応する必要があるだろう。
モデルコースである横山展望台を訪れるための検索結果では、オンデマンドバスに加えて、デマンドタクシーの選択肢も示された。運賃は、オンデマンドバス200円、デマンドタクシーは1450円だった。本紙編集長は軽装での1人利用だったのでデマンドバスを選択したが、デマンドタクシーでは事前に運賃額が明示されるため多人数ならタクシーを選択するケースもあると思った。
また、路線バス利用時には必須の時刻表を気にする必要のないオンデマンド型の乗合や相乗りは、タクシーに類似するサービスになると感じた。このため、タクシー側がデマンド型相乗り交通の受皿にならないと、MaaSによる移動利便の向上がさらなるタクシー需要減の要因になるという懸念も感じた。
未来シェアの配車システム
三重交通が運行する小型のオンデマンドバスに乗車すると、運転席には未来シェアが運用するオンデマンド配車用のタブレットが搭載されており、オンデマンド運行のため運転手が本紙編集長の名前を確認してから乗車するという手順となっていた。また、実証実験ということもあり、画面上に表示された乗り場に行くと整理係もいた。
しばらく待って鵜方駅前の乗り場からやって来た小型のオンデマンドバスに乗車すると、乗客は本紙編集長も含めて2人だけだった。実証実験ということもあり、志摩MaaSの認知度は低いようだった。
オンデマンド運行のため乗車ポイントで待つ必要はあるが、未来シェアのオンデマンド型相乗り(乗合)配車システムでは、利用者側にもリアルタイムの車両動態表示が行われるため、不安は無かった。
オンデマンドバスに乗車してしまえば、通常の路線バスとの違いは無いが、公共交通による周遊観光促進を目的とする観光型MaaSなので、車内での公共交通を利用した周遊観光案内はあった方が良いと感じた。通常の路線バス利用と同様に交通系ICカードで運賃200円の決済を行った。
横山展望台に到着すると観光客は多かった。三重県有数の観光地である伊勢・鳥羽・志摩地方でも自家用車による周遊観光が多いようで、観光施設などの駐車場では自家用車に加えてレンタカーも目に付いた。
一方で、展望台ということから山の上にあり、他に路線バスなどの公共移動手段が無いことから、展望台へのタクシー利用者も意外に多かった。MaaSの普及によってタクシー需要はどうなっていくのか、MaaSとタクシーの関係性を考えさせられる光景だったが、オンデマンド型の乗合や相乗りサービスは、確実にタクシーに類似するサービスになると感じた タクシー側でこうしたオンデマンド型サービスの受皿になっていかないと、MaaSがさらなる需要減の要因になるという懸念を改めて感じた。
待ち時間と効率のバランス
横山展望台から鵜方駅への帰路にもオンデマンドバスを利用したが、47分も待つことになった。オンデマンド交通の待ち時間と車両運用効率のバランスの取り方が重要になって来るだろう。横山展望台にやって来たオンデマンドバスから降車する乗客は1人だけいた。
オンデマンド海上タクシー
鵜方駅から近鉄電車に乗り賢島駅へ。こちらもモデルプランで紹介されていたオンデマンド海上タクシーを利用するためだ。オンデマンド海上タクシー(英虞湾マリンキャブ)の配船運用にも、オンデマンドバスと同じく未来シェアのシステムが使用されていた。ヴァル研究所が運用するインターネット上の複合経路検索サービス「mixway」で、賢島から都リゾート志摩ベイサイドテラスへの移動を検索すると、海上タクシーの利用が表示された。運賃は大人一人1500円。
天候が良かったこともあり、海上タクシーの利用は爽快だった。配船システムで表示される乗降ポイント間の利用ということも含めて利用の仕組みは、船ということを除けば、オンデマンドバスやオンデマンド相乗りタクシーなどと同様だった。利用者は本紙編集長1人だけだった。目的地である都リゾート志摩ベイサイドテラスに隣接する桟橋に到着すると、船長に1500円を支払って下船した。
相乗りタクで配車トラブル
都リゾート志摩ベイサイドテラスから賢島駅までの帰路にはオンデマンド相乗りタクシーを配車利用したが、ここでトラブルが発生した。
デマンド相乗りタクシーでも、オンデマンドバスや海上タクシーなどと同じく未来シェアが運用するデマンド型相乗り(乗合)配車システムが使われており、乗車地と降車地を入力して検索すると、デマンド相乗りタクシーの利用が表示された。事前確定運賃で、乗合(相乗り)ありの場合は580円、乗合(相乗り)なし970円と表示される。
配車アイコンをクリックすると、和栄タクシーの車両が配車されて来ることが車両動態表示されたが、到着予想時刻になっても、離れた位置の車両アイコンにまったく動く様子が無いことから、実証実験ということからシステムトラブルの可能性も考えて一旦キャンセル操作。再度、配車アイコンをクリックした。しかし、今度も車両アイコンは動かず、到着予想時間を過ぎてもデマンド相乗りタクシーはやって来なかった。
現場オペレーションが重要
いつまで経ってもデマンドタクシーが配車されて来ず、車両アイコンも動かないため、問い合わせの電話を和栄タクシーにすると、応対した高齢とみられる管理者から「車両側でパスワードが入らなくて配車タブレットの画面が立ち上がらない。すみません」とだけ言われる。高齢運転者の操作不慣れが原因のようだった。
「何だそれ!」 というのが、本紙編集長の率直な感想だった。
いくら最先端のMaaSシステムを採用しても、運行側で基本的な現場オペレーションが出来ていなければ台無しだということを、再確認する羽目になった。
仕方がないので現地で運用されているタクシー配車アプリを使ったが、「配車できる車両がありません」と表示されたことから、ホテルのフロントにタクシー配車を依頼すると、しばらくしてタクシーが配車されて来た。
特に観光型MaaSで想定される周遊型観光は、利用者側が旅程を策定するため、予定していた公共交通が機能しないと旅行そのものが台無しになり、やはりマイカーで、ということにもなりかねない 。
次回Taxi Japan 355号 「論風一陣 異例の国交大臣出席を冷静に読み解く!」をお楽しみに!
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