既存タク・路線バスへの影響懸念 渋谷でオンデマンド相乗り交通(Taxi Japan 393号より)

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高速バス大手のWILLEREXPRESS(都内江東区)や京都丹後鉄道を運行・運営するWILLERTRAINS(京都府宮津市)などを傘下に持つ、WILLER(村瀨茂高代表取締役CEO、大阪市北区)は7月1日、関東運輸局の許可を受けて、都内渋谷区の一部地域(渋谷駅、原宿駅、明治神宮前駅、神泉駅、代々木上原駅などを含む東西で約2・5キロ、南北で約1・3キロのエリア)を対象に、大人1人月極5000円の乗り放題のAIオンデマンド相乗りモビリティサービス「mobi」をスタートさせた。同居家族は1人月額500円で追加(6人まで)できるほか、月極定額以外でも大人1回300円(子供は半額)で利用できる。

運行開始となった7月1日の時点で、200人以上のサブスクリプション(月極定額での乗り放題)会員を獲得しているという。

mobi「mobi」の利用には、WILLERが提供するスマートフォンアプリを使い、エリア内に設定されたバーチャル乗降ポイントから、最寄りの乗車ポイントと希望する降車ポイントを選択して配車するという仕組み。

運行時間は、午前7時から午後10時まで。運行車両は、6人乗りのトヨタ・アルファード(スタート時は2台運行)などで、車両運行そのものはハイヤー・タクシー事業者の東京エムケイ(松原京美代表取締役、都内港区)が受託している。

WILLERの村瀬代表は、月極定額乗り放題のAIオンデマンド相乗り モビリティサービス「mobi」の今後の展開について「渋谷での目標は、初年度で300人ほどのサブスクリプション会員を獲得して採算ベースを確保」としており、さらに「2023年頃までに10都市、2025年までに70都市、100エリアでのサービス提供を行ないたい」と意欲を示している。

〈本紙編集長=熊澤 義一〉

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タク・路線バスへの影響懸念

mobi 画面イメージ1mobi 画面イメージ2一定の需要密度が見込める都心のターミナル駅(今回は渋谷駅)を起点とする月極乗り放題のAIオンデマンド相乗りモビリティサービス「mobi」の登場に、既存のタクシー・路線バス業界からは「一定の需要が奪われることになり、さらにこれが新宿駅、池袋駅、東京駅などへと拡大していけば影響は甚大だ。最終的には、JR山手線の内側が乗り放題エリアになりかねない」との警戒感が出ている。

「mobi」の月極乗り放題サービスでは、個人会員のほか、店舗会員も募集。30日間2万2000円で、お客と従業員が来店や営業活動などで乗り放題を利用できるほか、アプリへの店舗宣伝の掲載、店舗前に乗り場を設定などのサービスを提供するとしている。また、乗降ポイントは、電子地図上のバーチャル方式のため、利用者からの設置リクエストも受け付ける。

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新たな地域交通サービス

一方で、WILLERが「運行開始となった7月1日の時点で、200人以上のサブスクリプション会員を獲得している。渋谷での目標は、初年度で300人ほどのサブスクリプション会員を獲得して採算ベースを確保する」、「2023年頃までに 10都市、2025年までに70都市、100エリアでのサービス提供を行ないたい」などとしていることからも、定時定路線の路線バスとドア・ツー・ドアのタクシーの中間的なサービスとして、バーチャル乗降ポイント方式による月極乗り放題のAIオンデマンド相乗りモビリティサービスの展開に踏み切ったことは、新たな移動需要の獲得や潜在需要の掘り起こし、移動サービスの活性化とMaaSとの融合、地方自治体との連携などを企図していることは明らかだ。新たな形態の移動サービスとはいえ、関東運輸局が許可した正規の旅客運送事業としてスタートしており、そうした点でもライドシェアとは異なるものだ。

配車アプリを中心としたIT、AI技術の発展と、配車アプリ利用の社会への浸透がその背景にあり、需要密度と地域特性を考慮したサービス設計(渋谷では、ターミナル駅を起点とした都市部の狭いエリアが対象)など、自治体との連携・運行補助を前提とする交通過疎地などでの取り組みとは違った形での採算性の確保という観点から、既存のタクシー・路線バス事業者が一歩を踏み出す前に、高速バス事業者のWILLERが都市部における地域交通の分野に新たなサービス形態で参入してくることになった。

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京都府京丹後市でも開始

WILLERでは、6月30日に交通過疎が地域課題となっている京都府京丹後市(WILLERTRAINSが運行・運営する京都丹後鉄道宮豊線の峰山駅を中心とした峰山町・大宮町のエリア)でも大人1人月極5000円の乗り放題のAIオンデマンド相乗りモビリティサービス「mobi」をスタートしており、こちらも地元タクシー事業者の峰山自動車(矢谷平夫社長、京丹後市)が車両運行を受託している。

都心ターミナルの渋谷駅起点

WILLERでは翌7月1日、都内渋谷区の一部地域(渋谷駅、原宿駅、明治神宮前駅、神泉駅、代々木上原駅などを含む東西で約2・5キロ、南北で約1・3キロのエリア)でも、大人1人月極5000円の乗り放題のAIオンデマンド相乗りモビリティサービス「mobi」をスタートさせた。同居家族は1人月額500円で追加(6人まで)できるほか、月極定額以外でも大人1回300円(子供は半額、現金でも支払い可能)で利用できる。  運行開始となった7月1日の時点で、200人以上のサブスクリプション会員を獲得しているという。

「mobi」の利用には、WILLERが提供するスマートフォンアプリを使い、エリア内に設定されたバーチャル乗降ポイントから、最寄りの乗車ポイントと希望する降車ポイントを選択して配車するという仕組み。

運行時間は、午前7時から午後10時まで。運行車両は、6人乗りのトヨタ・アルファード(スタート時は2台運行)などで、車両運行そのものはハイヤー・タクシー事業者の東京エムケイ(松原京美代表取締役、都内港区)が受託している。

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半径2キロの移動がターゲット

WILLERの村瀬代表は「渋谷でのサービス開始時点の車両台数は2台を予定している。会員100人当たり1台のイメージだ」として、採算性と利便性のバランスから運行車両台数を決めていく考えを示したほか、「『mobi』は、半径2キロの生活圏内の移動をターゲットとして、自転車やマイ カーに変わる新たな”ちょい乗 り”サービスに位置付けられる。利用は世帯単位での月額料金、サブスクリプション制が基本になっており、乗降回数の制限なく利用できる。複数の会員が月会費を支払うことで、運転手付のクルマを確保し、会員でそのクルマをシェアするサービスと考えると分かり易い」などと説明している。  

事前に会員募集していたこともあり、渋谷での7月1日のサービス開始時点で会員数が200人を超えており、ハイヤー・タクシー事業者の東京エムケイに車両運行を委託する形により2台で運用をスタートした。なお、初日の午前7時から10時までの3時間の利用状況は、雨だったこともあり、30件ほどだった。

さらには、鉄道や路線バスなど既存の公共交通と「mobi」の連携による、サブスクリプション(月極定額による一定範囲での乗り放題など)でのMaaS構築などにも意欲を示すほか、京丹後市では、自社グループで運行・運営する京都丹後鉄道と「mobi」の連携サービス(列車の時刻に合わせた送迎サービス)にも取り組み、そうして得た知見をその後のサービス展開にも活用していく考え。

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本紙編集長が「mobi」を利用

本紙編集長は7月6日、WILLERのスマホアプリをダウンロードし、クレジットカードを登録。小田急電鉄と東京メトロ千代田線の代々木上原駅前のバーチャル乗降ポイントを乗車地点、表参道の明治神宮前駅最寄りの乗降ポイントを降車地点に設定して、配車操作を行った。すると、20分で配車するとの通知が出た。その後、配車まで23分となった。本紙編集長は、乗車そのものが目的のため乗車ポイントでそのまま待つことにした。すると、代々木上原駅前までの乗客を乗せた東京エムケイ運行のトヨタ・アルファードがやって来た。地元在住者とみられる中年女性ら3人が降車、代わって本紙編集長が乗務員から名前を確認された上で乗車した。

配車まで時間を要したものの、WILLER配車アプリの操作性、配車運用、高級車アルファードの乗り心地、乗務員の接客などには問題が無く、目的地である表参道の明治神宮前駅最寄りの乗降ポイントまでスム ーズな運行だった。10分ほどの乗車時間だったが、その間に3件の配車注文が入り、小雨だったこともあり、利用者も多いようだったが、相乗りは発生しなかった。注文が多いため、乗務員によると午後2時半から3台体制になるとのことだった。クレジットカードによる決済(今回は1回300円での利用)も特に降車時の手続きも必要無くスムーズだった。 タクシーを配車アプリで呼ぶことが社会に浸透しつつある中で、こうしたAIオンデマンド相乗りの新サービスも、タクシーや路線バスなどの既存公共交通、自家用車などとのコストおよび利便性の比較の上で、社会的受容性が高まりつつある。既存のタクシー、路線バス側の対策、対応も急務だと感じた。

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次回Taxi Japan 394号 をお楽しみに!

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