論風一陣 タク近未来像先取りのタイムトリップ!(Taxi Japan 425号より)

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政府による感染対策のあり様が、新型コロナウイルスによる実際の感染被害以上に人々の生活や精神を蝕んでいった人災の側面を忘れてはならない。今年後半になって政府がようやく、閉塞状況を誘発するような硬直的な感染対策を緩和し、社会経済活動を維持する方針に転換。本紙は今号が年内発行の最終刊となる。昨年に続きこの1年を本欄「論風一陣」で振り返ってみたい。 

昨年は、論風一陣欄で取り上げたテーマのうち新型コロ関連が全21本中で13本と半数以上に及んでいたが、今年は21本中5本と4分の1に減少。それは、コロナワクチンの接種拡大と浸透により、感染拡大の鎮静化傾向を今年前半は示し、その後に変異株が台頭したことで感染が再拡大する兆候を見せたが、変異株は感染力が強いものの重症化リスクは低いとの判断で、感染対策の緩和方針が継続されてきたためだ。 

新型コロナ関連に次いで掲載回数が多かったのが、4回のタクシー運賃改定関連。その中で特に複数回指摘してきたのが、運賃改定審査の基礎となる原価計算対象事業者の選定に対する異議だ。そのこと以上に今年に入って8地区(12月20日現在)で運賃改定が実施され、全国各地から申請(要請)が相次いでいる状況だ。

新型コロナ禍で傷つき疲弊したタクシー事業の経営体制を再構築する必要もあって運賃改定ラッシュが続いている。既に改定が実施された東京都特別区・武三などでは利用者の逸走も見られず、実働日車営収では改定率を確保ないし上回るような地区も出ており、都市部ほどこの傾向は顕著だ。アフターコロナに向けタクシー経営の復活、リセットに期待が寄せられている。

次に3回掲載したのが、川鍋一朗全タク連会長関連だ。「川鍋会長の無意識かつ軽率な発言に喝!」、「川鍋会長欠席の全タク連コロナ禍総会!」(6月30日付)、「上から目線の自己中に思いを致すべし!」(7月31日付)。川鍋氏が全タク連総会の直前にコロナ感染の濃厚接触者となったことで総会出席を自粛したことは止むを得ないが、全国のタクシー業界幹部が集まる年に1回の総会である。既に定着しているWEB会議システム活用によるリモート出席や、何らかのステートメントを用意して代読してもらうなど、全タク連のこの先1年の活動を占う意味でも業界団体トップとしての声や見解を総会に出席した全国の業界幹部や事業者に伝える義務があるのではないか、と総会会場にいて思ったものである。 

さらに、5月31日付で「二極化加速のタイムスリップに備えよ!」と警鐘を鳴らしたが、東京業界では、二極化というよりも、急拡大するフランチャイジーを含む日本交通グループ(川鍋一朗代表)の一人勝ちの様相が顕在化しているように見える。「コロナ禍は10年の時代変化を先取りする」と言われてきたが、この1年の来し方を振り返り、行く末に思いを致す時、タクシー業界の10年先の未来像がタイムスリップしたかのように、眼前に迫って来ているように感じるのは筆者のみであろうか。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 426号 をお楽しみに!

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