論風一陣 顕在化するファースト半マイルに注目!(Taxi Japan 427号より)

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一般社団法人静岡TaaS(清野吉光代表理事、静岡市)は昨年7月1日より、静岡市内の一部地域を対象に、タクシーによる月間定額乗り放題サービスの「タク放題」の実証実験を開始し、昨年12月末で6カ月間の当初予定を終了。さらに継続して6月末日まで実証実験を延長した。同時に今回の実証実験の延長期間内に、静岡MaaS基幹事業実証プロジェクト(しずおかMaaS)の業務委託を受けて「しずおかMaaSのりあい放題」を同時並行で手掛ける。

静岡TaaSの清野代表理事は、本紙のコラム「団塊耕志録」の執筆者で、本紙の昨年4月30日付け411号で「静岡TaaS第5回目の説明会」(第136回)を皮切りに、「いよいよ動き出した静岡TaaS」(22年5月31日付け、第137回)から月1回のペースで、静岡TaaSの現況と課題を極めて客観的かつ冷静に分析している。

清野代表理事は、タクシーに特化したソフトハウス大手の株式会社システムオリジン(海野知之社長、静岡市)の創業メンバーで、長年に渡って社長を務めてきた経歴を持つ。清野代表理事は、かねてよりタクシーを総合生活移動産業と位置付けてサブスク方式によるタクシーの乗り放題制度化推進の持論を展開してきた。社長退任後に、「まず隗(かい)より始めよ」の教訓に従って、自己資金を投入して静岡市内のタクシー会社を買収し、タクシー事業者の立場に立って、「タク放題」の実証実験に取り組むなど今日に至っている。

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筆者は、昨年8月22日に静岡TaaS事務所を訪問して清野代表理事から取材している。その時の説明で、会員となった高齢利用者の移動先が、乗り放題のエリア内にある自宅に近い病院やスーパー、金融機関などで、「タク放題」が無ければ、家族の誰かに送迎を依頼するか、無理して歩いていくか、などとして、タクシーがその受皿になっていない超近距離移動という潜在需要が顕在化している実態に目を見張ったものだ。

タクシー業界では、地域の移動の足として「タクシーがラストワンマイルを担う」と主張している。一方、静岡市内での実証実験では、既存タクシーでは十分に対応できていない、”フアースト半マイル“の移動を「タク放題」が担っているといえる。静岡市内で起こっているこの現象は、全国の地方都市の多くに共通しているはずだ。清野代表理事の自己資金に頼った実証実験は、いわば全国津々浦々のフアースト半マイルの国民の移動の確保に結び付く可能性を内包している。元来、地域の移動の確保は国や地方自治体などの責務だ。少子高齢化による人口減少の進行による社会の閉塞状況に歯止めをかける政策の立案に意欲と志ある政治家や行政マンはきっといるはずで、「タク放題」などの取組に対する公的な支援やバックアップを求めたい。

(高橋正信)


次回Taxi Japan 428号 をお楽しみに!

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