論風一陣 イコールフッティングに本音がポロリ!(Taxi Japan 442号より)

2016

川鍋会長

最近の一般マスコミの論調は、ライドシェア解禁前夜の様相を強めており、そんな状況の中で全タク連の第60回全国ハイヤー・タクシー事業者大会が9月27日、札幌市内のホテルで開催された。

挨拶に立った川鍋一朗会長は、ライドシェア解禁論議の高まりに「イコールフッティング(競争条件の同一化)が必要であり、ライドシェアの前にタクシー側の足枷を外す規制緩和をしてもらいたいと思っている。それが法治国家としての順番だ」などと訴え、東京や横浜、大阪のタクシーセンターで実施している地理試験の廃止や自動車教習所における二種免許教習期間の短縮化などを挙げたほか、二種免許試験の多言語対応と在留資格・特定技能1号への業種追加による外国人ドライバーの採用などの取組を進めていく考えを示した。

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ライドシェア解禁問題に絡んで、川鍋会長が「その前に必要だ」と提起した「イコールフッティング」とは、「商品やサービスの販売において、双方が対等の立場で競争を行えるよう、基盤・条件を同一にそろえることを指す」とある。言葉の意味通りだと、つまり川鍋会長は、ライドシェア解禁論議を進めるのであれば、その前にタクシー側の事業規制をライドシェアと同等の条件で競争が出来るように緩和をしてもらいたい、ということになる。うがった見方をすれば、現状の政官界のニュアンスとして「現状のままだとライドシェアについては何らかの形での解禁は避けられない」と川鍋会長が判断しており、その結果としてイコールフッティングという言葉を持ち出して来た、と考えれば辻褄が合うように思える。

この発言は全国事業者大会を主催している全タク連会長として不適切な発言である。大会では、7つの決議が採択され、そのメインは「国民の安全を脅かすとともに地方創世の担い手である地域公共交通の存続を危うくする『ライドシェア』と称する白タク行為を断固阻止する決議」である。この決議に基づき、ライドシェアを断固阻止するために全国のタクシー事業者が一致団結して関係要路に説得活動や陳情を行わなければならない、にもかかわらず、川鍋会長一人がライドシェア解禁を前提とするようなタクシーの規制緩和を提起しているとすれば、全タク連でライドシェアの断固阻止を過去13年間も決議してきていることへの大いなる背信、問題発言である。

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全国事業者大会の途中で行われた意見交換では、川鍋会長のイコールフッティング発言に不安を抱いた出席者からの発言があったりしたものの、最後は、挙手中の出席者がいる中で時間的な余裕がありながら唐突に意見交換を打ち切ってしまった。

川鍋会長が、何らの背景説明なしに全国のタクシー事業者に向けてイコールフッティングを口にしているのは、川鍋会長の一人よがりにすぎる。ライドシェアとのイコールフッティングによってどういうタクシー事業の形を目指すのか、川鍋会長の説明責任を求めたい。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 443号 をお楽しみに!

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