論風一陣 改めて貞包提案の見識、先見性に注目!(Taxi Japan 445号より)

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 岸田文雄・内閣総理大臣が、臨時国会冒頭の所信表明演説の中で「ライドシェアの課題に取り組む」と発言して以降、日本版ライドシェアの導入に向けた検討の動きが急である。

 規制改革推進会議の地域産業活性化ワーキング・グループの第1回会合が11月6日に開催され、UBER Japan側が「諸外国におけるライドシェア法制と安全確保への取り組み」と題して説明し、山中志郎・モビリティ事業部ゼネラルマネージャーは「ライドシェア導入の適否については、日本国内において議論を行うべきものと考えている」などとする見解を述べた。一方で、全国ハイヤー・タクシー連合会の川鍋一朗会長は、ライドシェアの懸念点を指摘した上で「『ライドシェアの課題を検討する』その前に、タクシーの規制緩和を、イコールフッティングを!」と訴えた。

 WGの最後に発言した、規制改革担当の河野太郎大臣は「守るべきは規制ではなく、国民の移動の自由だ」と述べ、この発言がライドシェアの検討とともに一般マスコミに大きく取り上げられた。今まさにライドシェア解禁前夜の様相である。

 そこで忘れてはならないのが、福岡県北九州市の三ヶ森タクシー・貞包健一社長が6年前の2017年10月24日付で、政府の規制改革推進会議に表題「多様な運転手が旅客運送サービスを提供する新たなタクシー事業の実現」を提案していたことだ。

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 貞包氏は、ライドシェアに対して「ただ反対を叫んでいてもダメ。良さを研究し取り入れるべきは積極的に取り入れる」との考えから、二種免許取得のハードルを無くすことで稼働車両数を増やし、運行コストを低減する。一方で、自家用車両に乗務する一種免許運転者には講習受講を義務付け1・5種的免許を創設して安全性の確保も図るというもの。全タク連の川鍋一朗会長が供給不足対策として6月の正副会長会議で提起した一種免許乗務車両構想「川鍋プラン」の先駆的な存在だ。

 このところの日本版ライドシェア検討の急展開に対して、既に「タクシー業界として、ただ反対を叫んでいても厳しいだろう」という見方が大勢となって来ている。河野大臣が訴える「国民の移動の自由」についての対応策を、タクシー業界としてどうするのか。

 全タク連の川鍋会長は、貞包提案について当時、「タクシー事業者からこうした提案が出ると、(ライドシェアとの)合戦の最中に後ろからの矢が刺さって、大腿骨あたりを貫通したよう」などと強く批判、貞包氏は福岡県タクシー協会の副会長職を降りることになった経過がある。

 改めて貞包氏の先見性を称え、いま一度、貞包提案を顧みるべき時だろう。

(高橋 正信)


次回Taxi Japan 446号 をお楽しみに!

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