全国で19モデルのMaaS実証実験 /令和元年は日本のMaaS元年に (Taxi Japan 348号より)

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クシーや路線バス、鉄道、レンタル自転車など様々な公共交通サービスをスマートフォンアプリで一体的に提供し、経路検索・予約・発券・配車・決済までを行い、自家用車の利便性に負けない形で移動ニーズを満たすだけでなく、さらに移動ニーズと結び付けた様々な付加価値を提供することまでも目的とするMaaSの社会実装に向けた取り組みが、日本でも実証実験などの形でスタートする。全タク連でも、新たに追加した活性化9項目の最初に「MaaSへの積極的参画」を盛り込んだところだ。

国土交通省は、MaaS 等新たなモビリティサービスの推進を支援する「新モビリティサービス推進事業」について、全国の牽引役となる「先行モデル事業」を19事業選定した。大都市近郊・地方都市型が「神奈川県における郊外・観光一体型MaaS実証実験」など6モデル、地方郊外・過疎地型が「定額タクシーを中心とした過疎地型Rural MaaS実証実験(島根県大田市)」など5モデル、観光地型が「伊豆における観光型MaaS実証実験」など8モデルとなっている。

国土交通省がこのほど発表した「『平成30年度交通の動向』『令和元年度交通施策』」(交通政策白書)においても、「MaaSは、交通サービス分野のデマンドサイド・サプライサイドの両面に大きな変革をもたらすことが考えられるが、それにとどまらず、消費行動の変化・拡大やライフスタイルの変化、さらには、これらに対応するまちづくりやインフラ整備など都市や地域のあり方にも影響をもたらす可能性があり、都市分野、地域の経済社会など様々な分野にインパクトをもたらすイノベーションであるとも位置づけられている」などと指摘している。

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日本のMaaS元年に


 日本では、少子高齢化と地方を中心とした過疎化の急速な進行で交通空白地が拡大傾向にあり、高齢運転者による痛ましい交通死亡事故の発生が社会問題化し、自家用車に頼らない移動手段の確保が大きな課題として浮上している。

そうした中で、タクシーや路線バス、鉄道、レンタル自転車など様々な公共交通サービスをスマートフォンアプリで一体的に提供し、経路検索・予約・発券・配車・決済までを行い、自家用車の利便性に頼らない形で移動ニーズを満たすだけでなく、さらに移動ニーズと結び付けた様々な付加価値を提供することまでも目的とするMaaSに注目が集まっている。MaaSの社会実装に向けた取り組みが実証実験などの形で日本各地においてスタートする見通しで、令和元年は日本のMaaS元年になりそうだ。

全タク連も、新たに追加した活性化9項目の最初に「MaaSへの積極的参画」を盛り込んだところだ。

先行モデル19事業


そうした状況の中で、国土交通省はこのほど、MaaS 等新たなモビリティサービスの推進を支援する「新モビリティサービス推進事業」について、全国の牽引役となる先駆的な取り組みを行う「先行モデル事業」を19事業選定。

19事業の内訳は、大都市近郊・地方都市型が「神奈川県における郊外・観光一体型MaaS実証実験」など6モデル、地方郊外・過疎地型が「定額タクシーを中心とした過疎地型Rural MaaS実証実験(島根県大田市)」など5モデル、観光地型が「伊豆における観光型MaaS実証実験」など8モデルとなっている。

国交省では、新モビリティサービス推進事業として選定した先行モデル19事業について、「全国各地のMaaS 等新たなモビリティサービスの実証実験を支援し、地域の交通課題解決に向けたモデル構築を推進する」として、①大都市近郊型・地方都市型、②地方郊外・過疎地型、③観光地型などの3つの類型ごとに実証実験モデルを選定したとしている。

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大都市近郊型MaaS


大都市近郊・地方都市型MaaSの実証実験として選定されたのは、神奈川県川崎市・箱根町の「神奈川県における郊外・観光一体型MaaS実証実験」、兵庫県神戸市の「まちなか自動移動サービス事業実証実験」、茨城県日立市の「日立地域MaaS実証実験」、茨城県つくば市の「顔認証やアプリを活用するキャンパスMaaS及び医療MaaS実証実験」、群馬県前橋市の「社会実装に向けた前橋版MaaSの実証」、静岡県静岡市の「令和元年度静岡型MaaS基幹事業実験」の6モデル。

地方郊外・過疎地型MaaS


 地方郊外・過疎地型MaaSは、三重県菰野町の「こもののおでかけをMaaSで便利にするプロジェクト」、京都府南山城村の「相楽東部地域公共交通再編事業」、京都丹後鉄道沿線地域の「京都丹後鉄道沿線地域での地方郊外型WILLERSMaaS事業におけるQRシステム導入実証」、島根県大田市の「定額タクシーを中心とした過疎地型Rural MaaS実証実験」、広島県庄原市の「庄原地区先進過疎地対応型MaaS検討・実証プロジェクト」の5モデル。

観光地型MaaS


 観光地型MaaSは、「ひがし北海道観光型MaaSにおける移動及び車両データ収集、利活用実証」、「会津Samurai MaaS プロジェクト」、「伊豆における観光型MaaS実証実験」、「志摩地域観光型MaaS実証実験」、「大津市中心市街地及び比叡山周遊の活性化を目指した大津市版MaaS実証実験」、「山陰エリア(鳥取県・島根県)における観光型MaaS実証事業」、「瀬戸内の復権へ:海・陸・空の自由な移動網による国際観光先進都市の創造」、「八重山MaaS化事業『Phase1:観光型MaaS構築に向けた実証実験』」などとなっている。

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神奈川の郊外・観光一体型


例えば、大都市近郊・地方都市型MaaSの「神奈川県における郊外・観光一体型MaaS実証実験」は、神奈川県、川崎市、箱根町、大手私鉄の小田急電鉄、小田急バス。小田急箱根ホールディングスで構成する協議会が実施主体となり、「神奈川県内の郊外住宅地と観光地の双方で一体的に、複数の交通サービスや生活サービスの検索・決済等ができるMaaSアプリを提供するとともに、交通と生活・観光サービスがセットになったパッケージ商品をMaaSアプリ上で提供する」としながら「地域特性を踏まえたパッケージ商品を企画・提供し、公共交通利用促進や交通混雑緩和などの地域の課題の解決を目指す」などとしている。

実証実験の内容は、スマートフォン向けMaaSアプリの構築・提供を通した、MaaSアプリサービスの効果や需要に関する実証で、MaaSアプリの対象となる交通手段として、鉄道、バス、ロープウェイ、ケーブルカー、観光船、タクシー、カーシェア、レンタカーなどを予定している。実証実験期間は、今年10月から来年3月まで。利用料金は、MaaSアプリの利用料は無料とし、デジタルフリーパスは定額制を採用。ただし、タクシー、カーシェアリング、レンタカーは通常料金を収受する。その上で、公共交通利用と生活サービスや観光施設利用等をセットにしたMaaSアプリ専用の料金体系の提供を目指すなどとしている。

国交省の交通政策白書


MaaSを巡っては、国土交通省がこのほど発表した「『平成30年度交通の動向』及び『令和元年度交通施策』」(交通政策白書)においても、「MaaSをはじめとする新たなモビリティサービスの導入に向けた取組」として取り上げ、「MaaSのインパクトとその推進の必要性」と題して「MaaSは、ドア・ツー・ドアの移動に対し、様々な移動手法・サービスを組み合わせて1つの移動サービスとして捉えるものであり、ワンストップでシームレスな移動が可能となる」としながら「加えて、MaaSは、様々な移動手段・サービスの個々のサービス自体と価格を統合して、一つのサービスとしてプライシングすることにより、いわば『統合一貫サービス』を新たに生み出すものであり、価格面における利便性の向上により、利用者の移動行動に変化をもたらし、移動需要・交通流のマネジメント、さらには、供給の効率化が期待されている。さらに、小売・飲食等の商業、宿泊・観光、物流などあらゆるサービス分野との連携や、医療、福祉、教育、一般行政サービスとの連携により、移動手段・サービスの高付加価値化、より一層の需要の拡大も期待されている」と提起。

その上で、「MaaSは、交通サービス分野のデマンドサイド・サプライサイドの両面に大きな変革をもたらすことが考えられるが、それにとどまらず、消費行動の変化・拡大やライフスタイルの変化、さらには、これらに対応するまちづくりやインフラ整備など都市や地域のあり方にも影響をもたらす可能性があり、都市分野、地域の経済社会など様々な分野にインパクトをもたらすイノベーションであるとも位置づけられている」などと指摘している。

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次回Taxi Japan 349号「MaaSを中心としたドイツとスウェーデンの公共交通事情」をお楽しみに!

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