論風一陣 機能不全な全タク連の存在意義を問う! (Taxi Japan 387号より)

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一体「誰の何のために存在する組織なのか?」

昨年の春先から新型コロナウイルス禍に直撃、翻弄され、経営破綻の瀬戸際に立たされている全国のタクシー事業者の間から、全国ハイヤー・タクシー連合会(川鍋一朗会長)のあり様に対して、悲鳴に近い叫び声が筆者のもとに聞こえてくる。

川鍋会長

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全タク連ではこれまで、新型コロナウイルス対策として各種会合の開催を自粛してきたが、東京に緊急事態宣言が発出されていた3月日に開催された第152回理事会は、今年になって初めての会合となった。その理事会では、国土交通省の大辻統旅客課長が「タクシーに関する取り組みについて」と題した講話を行った。講話終了後の質疑応答では、国交省関連の質問がいくつか出たものの、タクシー業界全体の厳しい現状報告や政府への要望なども出ない、緊張感の乏しいものに感じた。緊急事態宣言の中でも全タク連が理事会を開催したのは、通常総会に向けた令和3(2021)年度の事業計画案、同収支予算案の承認を得るためで、定款第条の理事会の書面によるみなし決議は法人法第条(理事全員の同意が必要)によると定められていることから、一人でも同意しない理事が出た場合には議案が承認されないという事態を回避するために開催されたものとみられる。

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その一方で、全タク連の一部の幹部事業者からは「第4波の感染拡大で再々の緊急事態宣言が発出されたら、8割のタクシー会社はつぶれてしまう」と警鐘を鳴らした上で、政府に対して①公共交通機関としてのタクシーに対する直接の経済支援策②雇用調整助成金の特例措置の延長③納付猶予措置が講じられている消費税や社会保険料の減免・免除 ー などを求める声が出ているが、これが全タク連の施策に反映されてこないのが実情である。  

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全タク連の会長に川鍋氏が就任したのは4年前。就任あいさつで、「地域事情には疎い面があり、地方のことは一から勉強して皆さんの知恵も拝借して、出来る限りのコンセンサスもとってタクシー業界を良いものにしたい」と明言して見せたのである。が、この4年間の全タク連運営を見ると大都市中心、なかんずく東京に比重をかけた地方軽視の傾向にあるのではないか、と言わざるをえない。川鍋氏の就任時の明言は、単なるリップサービスだったと指摘したい。  

延長された緊急事態宣言の真っただ中で開かれた全タク連理事会を取材して、平時と何ら変わらない会議運営には暗澹たる気持ちになった。組織のトップの言動はその組織のあり様を左右する。川鍋氏は、高性能空気清浄機などを備えたニューノーマル(新常態)タクシーへの補助金獲得に意欲的だが、それ以上に切実な水面下の声に耳を傾けて、これに応えなければならないはずだ。事業継続の危機にある地方のタクシーの現状を直視し、北海道から九州、沖縄に至る全国のタクシー業界全体を俯瞰した全タク連のあり様、取組みの改善を求めたい。

(高橋 正信)

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次回Taxi Japan 388号 をお楽しみに!

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