全国ハイヤー・タクシー連合会の川鍋一朗会長は、東京大手四社の一角である日本交通の代表取締役を退任したことを昨年9月10日付441号の本紙本欄で報じて、会長としての資格要件の有無を問うた。
それは、日本交通ホールディングスを共同筆頭株主として、川鍋氏が代表取締役会長を務める配車アプリ大手GOの株式上場を目指す中で、配車アプリ会社とタクシー会社のそれぞれの代表取締役を務めることが商法上の利益相反に当たる懸念から、こともあろうに配車アプリ会社GOを選択して日本交通の代表者を退いたというわけだ。その後、川鍋会長が「日本型ライドシェア」の施策などで配車アプリ会社に利益誘導するような立ち位置の言動を繰り返し拡散していることに、タクシー業界内には水面下での不信感が増大している。このことは、川鍋氏が代表取締役である配車アプリ会社GOが、特許庁に「日本型ライドシェアドライバー」「ライドシェアドライバー」などの商標出願を行っているという事実からも明らかだ。
川鍋会長の日本交通代表取締役退任後の主な言動を次に示す。
昨年9月27日の全タク連事業者大会で川鍋会長は、イコールフッテイング(競争条件の同一化)を口走り、ライドシェア解禁論を誘引し、規制改革推進委員会のメンバーを勢い付けたことが発端だった。全タク連としては、例年の通常総会や秋の事業者大会で「ライドシェアと称する白タク行為を断固阻止する決議」を採択してきており、そのことに照らしてもイコールフッテイング発言は、ライドシェア容認を前提とする背信行為である。
今年になって配車アプリ会社のGOでは1月12日に、「日本型ライドシェア」の導入支援窓口を開設し、ライドシェアドライバーの募集を開始している。反面、川鍋会長は規制改革推進会議への出席辞退を続け、タクシー業界の立場を主張する機会を自ら閉ざしているのは、タクシー業界トップとしての職責放棄に他ならない。
その一方で、3月15日開催された小泉進次郎・衆院議員が会長を務める超党派・ライドシェア勉強会への出席依頼には応じて、自社の日本交通における「日本型ライドシェア」へのドライバー応募が、「1日300人来ていて、1か月で1万人を超えた」などと発言し、提出資料では「タクシーとライドシェアの共存共栄」「タクシーも、ライドシェアも」という「選択肢のある社会の実現」という主張を全タク連の名前で行うなどの独断専行ぶりだ。加えて川鍋氏が会長職を兼務している東京ハイヤー・タクシー協会における「日本型ライドシェア」の出発式を、斉藤鉄夫・国土交通大臣や河野太郎・規制改革担当大臣らを招いて自社の日本交通葛西営業所で開催する案が浮上しているに至っては、さすがに協会私物化への非難が出ている状況だ。
このような川鍋会長の一連の言動を見過ごすことはできない。川鍋氏に、タクシー業界の利益代表者たる「全タク連会長の資格要件有りや無しや」を、改めてすべてのタクシー事業者及び関係諸氏に問いたい。
(高橋 正信)
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