論風一陣 国際自動車Gを襲ったコロナ禍の衝撃! (Taxi Japan 371号より)

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国際自動車(西川洋志社長、都内港区)は6月29日、「持続的成長に向けた事業改革の実施」と題した取り組みを発表した。副題には「コロナ禍、MaaSに対応した新ビジネスへの挑戦」を謳い、「持続的な成長と安定的な収益の確保を図るための事業改革を断行」としている。

国際自動車(km)の新ビジネスモデルとしては、まず、グループ19社を10社に再編。タクシー事業では、買収した夢交通やライオン交通を含めた都内の直営タクシー9社を2社に再編。国際ハイヤーとケイエム国際を合併。また、「燃料の転換に伴うエネルギー戦略を担う新会社」を設立するほか、「コロナ禍の影響による国内観光客の集団移動スタイルの減少に加え、MaaSの推進、自動翻訳の普及により海外からの観光客の『マスからパーソナル』への加速度的な変化」に対して、小規模観光に対応した観光バスの小型化を進める。それらの事業改革と同時に組織改革も行い、役員の専任化と削減、本社機能のスリム化、グループ各社の統合などのリストラ策を打ち出した。

その背景には、新型コロナウイルスによる外出自粛や企業のテレワーク推進などの影響で、4月と5月の2カ月間でハイヤー・タクシー事業の営業赤字が25億円余りになったほか、新型コロナウイルス禍に端を発した新しい働き方や生活様式の定着によるバス事業における需要動態変化への対応に止まらず、収益全体を支えてきたハイヤー事業の需要減少傾向への対応も迫られている。そしてタクシー事業についても、2020年3月期決算において都内9社で計5億7200万円もの赤字を出している状況で、全国一のタクシー市場といわれる東京において、営収水準や稼働率などで業界トップクラスを誇ってきた国際自動車のタクシー各社が適正な利益を上げられず赤字経営を余儀なくされている実態が、事業改革のもう一つの背景としてある。

収益確保に大きな役割を果たしてきたハイヤー事業は、新型コロナウイルス禍による営業環境の悪化で大きなダメージを受けていて、壊滅状況のインバウンドについては今後の見通しも立たない状況とみられる。バス事業もインバウンドを含む観光需要が壊滅的な落ち込みとなり、そしてタクシー事業もコロナ禍以前からの赤字体質にある。これらの課題を同時にクリアしていかなければ、国際自動車グループの持続的成長は果たせない。

国際自動車の事業改革の取り組みは、個別事情にとどまらず、新型コロナウイルス禍にある全国のすべてのタクシー事業者に事業改革を求めていると受け止めるべきだ。国際自動車の素早い対応は、同業他社にとって自社の事業改革へのケーススタディーになるのではないか。

(高橋 正信)

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