論風一陣 宣言解除後の共倒れ防止に創意工夫を! (Taxi Japan 368号より)

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政府は5月25日、改正新型 インフルエンザ等対策特別措 置法に基づく緊急事態宣言を、残る東京、神奈川、千葉、埼玉、北海道の5都道県を対象に解除したことで、国内のすべての地域で全面解除となった。緊急事態宣言は4月7日に 東京、神奈川、千葉、埼玉、 大阪、兵庫、福岡の7都府県を皮切りに発出され、その後、ゴールデンウィーク前に対象地域を全国に拡大した。当初の期限だった5月6日は延長され、5月末までとしていたが、それを待たずに緊急事態宣言が全国において解除されることになった。  

新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言は、4月7日の発出から実に49日間の長期にわたった。  

その間、人の移動にはステイホーム、企業には 在宅勤務によるテレワークが要請され、百貨店や飲食店など広く営業自粛が求められ、都内のビジネス街や銀座などの繁華街は閑散として、事実上のロックダウン状態に置かれてきた。これによる社会経済へのダメージは宣言解除後もボディブローのように深刻かつ長期にわたり続く可能性がある。  

タクシー業界では、すでに東京や大阪をはじめ各地でタクシー事業から撤退、廃業の動きが顕在化しており、需要低迷が続けば事業閉鎖の動きは今後も続くものとみられる。そんな中でタクシー業界では、 フードデリバリーによる飲食品の宅配や買い物代行、さらには軽症感染者の患者輸送を請負うなど、懸命に市場環境の変化に対応しようとする動きが出ている。  

川鍋一朗氏は、平成26年に 東タク協会長に就任した時に、「生き残るには、強いもの、賢いものではなく、とにかく変化できたものだ」、「論じるより実践、形式より結果を重視したい」と発言している。生き残るためには環境に応じて変化する、論じるより実行する。このことは、新型コロナウイルス禍への対応としても言えるのではないか。  

しかし、事実上のロックダウンの影響により、都内特別区・武三地区における4月の原価計算対象事業者タクシー輸送実績は、計画休車により実働率 53.6%でも実働日車営収は2万2511円(前年 同月実績比 45.7%)だった。 タクシーの稼働が半分強で営収は前年の半分以下というのが実態だ。単純計算すれば、タクシー需要は前年の4分の1程度まで下落している。  

4~5月は、計画休業した 事業者がかなりあったほか、日本交通や国際自動車などの大手事業者を中心に自主的に実働率を50%に抑えるなどしてきている。しかし緊急事態宣言の解除により、ほとんどの事業者は6月から全車稼働に向けた動きをみせているが、 宣言解除で直ちに以前のようなタクシー需要が回復することは期待できない。需要が少ないままでは営収確保がかなわず、最低賃金さえ賄えないケースも出て来るだろう。そうなればタクシー事業者間で共倒れになりかねない。  

独禁法の縛りはあるが、タクシー事業を健全に残していくためには需要回復の度合いに応じた自主的な供給調整など、共倒れ防止への創意工夫が必須だ。

(高橋 正信)

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次回Taxi Japan 369号 をお楽しみに!

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